天使のわは「視覚療育特化型放課後等デイサービス」です。
読み書きなどの学習や運動をするうえで、視覚機能はとても大切です。さまざまな問題を持っているお子さんの中に、視覚機能の問題が見られることがあります。ビジョントレーニングは、視覚の入力機能(眼球運動)、情報処理(視空間認知)、出力機能(眼と手と体の協調運動)を高めるトレーニングです。
天使のわは、2017年5月にJoyVision北出勝也先生のご指導のもと「視覚療育特化型放課後等デイサービス」となりました。現在、ビジョントレーニングインストラクター6名が在籍し、子どもたちの療育・学習支援にビジョントレーニングを取り入れています。
また、「視覚と運動感覚の連動の問題」を踏まえてビジョントレーニングだけではなく「ブレインジム」を取り入れています。ブレインジムは、発達支援が必要な子どもたちの為に、天使のわ開設当初から取り入れており(ブレインジムインストラクター原田先生担当)ビジョントレーニングの効果をさらに高めるものと確信し相乗効果を生んでいます。
トレーニング内容:眼のストレッチ(追従・跳躍・寄り目)、お手玉タッチ、北出先生のドリル(勉強と運動が苦手な子のビジョントレーニング)、アボロ(パズル)、ジオボードを中心に行い、バランス感覚を鍛える一本足下駄を使用しました。
また、楽しくトレーニングできるように、けん玉やビー玉遊び、テーブル卓球、お手玉、書籍「ミッケ」「時の迷路」、スピードカップスなどを行いました。
子どもたちはトレーニングだけだと、構えたり、飽きてしまうので「遊びながら楽しくトレーニング!」ということを基本にしています。室内では、テーブル卓球やカードゲームを行い、天気のよい日は近くの北海道大学構内を散策し、ボールや身体を使った遊びをすることもあります。
*環境が整えばある程度集中できるが、気になることがあると、すぐにそちらに注意が向いてします。運動が苦手で、目に関しては困り感など特に自覚はない。
最初の頃は、トレーニングが面倒な様子があったため、A君と話し合い、本人の希望で疲れる前に最初に行うことを約束しました。また、飽きないようにA君の得意なけん玉や大好きなアニメのキャラクターをたくさん貼って探すようにしたり、時間を計ってモチベーションを高めるように工夫しました。
中学3年生で高校受験があり、面接対策を兼ねていることを伝えると、真剣に取り組むようになりました。面接練習で試験官役のスタッフの顔を見ることができず視線があちこち泳いでいたが、4か月後の受験直前の練習では、スタッフと目が合うようになり、受け答えもしっかりして無事に高校に合格できました。
A君は自分でも「人の顔を見てしゃべれるようになった!」と驚き、人との距離感も少しずつとれるようになりました。
最初はブレインジムに抵抗感がありましたが、2か月後にブレインジムを受けてみるとその良さを実感し、ブレインジムのある日は自分からビジョントレーニングと一緒に行うようになりました。体の協調運動が苦手で、ボディイメージも弱いので、体を楽しく動かすことでよりビジョントレーニングの効果が高まると思われ、なるべく受けるように促しました。
野球のバッティングでは、バットにボールが当たりませんでしたが、トレーニング後半はボールをよく見て打てるようになりました。
今後も眼と手や体の協調性を整えるためにも一緒に取り組んでいきたいと思います。
*ある程度決まったスケジュール通りに行動することが得意で、ビジョントレーニングにも積極的に取り組んでいます。3年前の通所時からブレインジムの良さを体感し、今はそれにプラスしてビジョントレーニングを行っています。3年前はストレスが溜まりやすく、家でキレて奇声をあげたり、叫ぶなどの行動が見られました。揺れるものを好むので、自分で何とか調整しようと夕方、毎日1時間ブランコに乗ったり、冬はウォーキングをしていました。今は自分でブレインジムの動きを覚えて、緊張や不安がある時には自己調整のためにやっています。
B君は「縦読み、横読みともスラスラ読めるようになった」「本を読むスピードがアップした」と自覚できるまでになりました。
また、英語の文章で名詞の前につける「a」という冠詞を見落としていましたが、7ヶ月後には見落とさないようになりました。
バランスの難しい1本足の下駄を履き、お手玉タッチをしたり、バランスボールの上で立つことが出来るようになり、自分でも「バランス感覚が良くなった!」と話しています。
B君は、本を読む時に行を飛ばすことが多かったのですが、ビジョントレーニングを始めてからは改善し、今では小さな文字の文庫本をよく読んでいます。
発達支援が必要な子どもたちは、コミュニケーションが取りにくいのですが、1対1で行うトレーニングの時に、学校や友人のことなど、いろいろな話しをしてくれるようになりました。
また、板書が取れるようになったり、ワークの答え合わせで段ずれがあって解答が書けなかったことが改善しました。
数値では表せませんが、全体的に自信がついて意欲的に学校生活を送るようになり、改めてビジョントレーニングの効果を実感しました。
「楽しい」ということが子どもの力をより引き出すことになりますので、これからも遊びを取り入れて、自然に楽しくトレーニングをする!ということを基本に、実践していきたいと思っています。
2019年10月石狩管内教育研究会 障がい児教育部会 肢体部門主催研修「ビジョントレーニングの意義と実践指導」のテーマでお話しました。
講師:天使のわビジョントレーニングインストラクター
眼球運動、視空間認知、眼と体の協調性についての基本と実践例を踏まえてワークもいくつか行いました。
実際のトレーニングを体験してもらい感想をシェアし、また、「天使のわ」でトレーニングをしている児童が日常生活で活かされいる体験を話せる機会に恵まれました。
今回、参加していただいた皆さま、丁寧に研修準備をしていただいた先生方に心より感謝申し上げます。